
試合レポート&インタビュー
IBJJF PAN PACIFIC 2025
試合レポート&インタビュー
IBJJF PAN PACIFIC 2025
丹羽飛龍――静と動を制御する戦略家
メルボルンで開催されたIBJJF PAN PACIFIC 2025。
日本から参戦した丹羽飛龍選手(AXIS YOKOHAMA)が、テクニカルな試合展開で2位入賞を果たした。ここでは試合の詳細と、試合後に行われたインタビューをお届けする。
現地入りとコンディション調整
――まずはお疲れさまでした。今回のパンパシフィック遠征について教えてください。
「前日の午前8時ごろ着のフライトでメルボルンに入りました。幼馴染が大学でこちらにいて、会場から10分ほどの場所に住んでいるので、今回は彼の家に泊まっています。初めてのオーストラリアでしたが、彼のおかげで特にストレスもなく過ごせました。」
――現地到着後の練習は?
「していないです。前日だったので特に必要ないかなと。ただ、泊まっているマンションにジムが付いていたので、軽く体を動かしました。」
試合展開――冷静な判断が生んだ攻防
――試合を振り返っていきましょう。開始直後、ダブルガードからトップを選択しました。これは作戦通り?
「はい。僕はあまり相手ごとに作戦を立てないタイプなんですが、この階級はほとんどがダブルガードになるので、“上を取って攻めよう”と考えていました。前にダブルガードから時間を使いすぎてしまったことがあったので、その反省もありました。」
――トップを取ってからは岡泉選手のシャローラッソーに対してプレッシャーをかけていましたね。この時の攻防は振り返ってどうですか?
「少し攻めが単調になったと思います。もっといろいろな展開があったのですが、相手のグリップが良く、上手く崩せませんでした。」
――その後、岡泉選手が奥脚にシングルXを仕掛けてきました。この場面は最初の山場で印象的でした。
「あの形はAOJの選手などもよく使うので、慌てることはなかったです。ただいいグリップを作られちゃいましたね」
――スイープされ、ポイントは0-2(AD1-0)。その後のボトムになっての攻防ではどうでした?
「岡泉さんは上になってもプレッシャーをかけてくるタイプではなく、ベリンボロやシッティングを多用するタイプ。なのでパンツを持った流れで、結果的にレッスルアップのようなスイープになりました。」
スイープに成功してスコアは2-2(AD1-0でリード)。
丹羽選手はレッグトラップでプレッシャーをかけ続け、残り2分を切っても積極的に攻めの姿勢を崩さなかった。
「同点になることも考えて、最後まで良い印象で終わるように攻め続けようと思っていました。」
――残り30秒、岡泉選手がシングルXスパイダーを作りました。
「あれは上手く作られちゃいましたね。でもあれも練習していた形なのでミスさえしなければ大丈夫だと思っていました。」
――そこから岡泉選手が内回りで股をくぐり、スタンドバックを奪う展開に。
「普段の練習でもやっている形だったので焦りはなかったですが、まだ対処が未熟でした。」
最終的にスイープとバックADが2つ加算され、スコアは2-2(AD1-2)で試合終了。惜しくも判定負けとなった。
試合を終えて――次なる舞台へ
――ムンジアル出場ポイントは現在どのくらいですか?
「ここ2年は大会に出ていなかったので、今回の2位で18ポイントです。僕は何かややこしてて前にパンナムで2位になっているので、グランドスラムポイントは持っています。だからトーナメントではシードになることが多いんですよ。」
――今後の予定は?試合前インタビューではワールドプロに出ると聞いてますが
「はい、この後はワールドプロに出場します。」
――11月のイーストジャパンには出るつもりはない?
「うーん、出ますか。イーストジャパンも出ます。ヨーロピアンにも出たいので。」
――ヨーロピアンには確か40ポイント必要でしたよね。
「はい。イーストジャパンで優勝してヨーロピアンに出ます。ワールドプロと連戦になりますけど頑張ります。」
道場運営と兄弟の挑戦
――お兄さんの怜音さんは今回は出場していませんでしたが?
「去年の12月から兄弟でAXIS横浜を引き継いだんです。それもあって兄は出ていません。」
――怜音さんの試合出場は去年のSJJIFワールドが最後ですか?
「そうです。まだ道場運営に慣れていないのでちょっと難しいです。もう少し落ち着いたら、兄もまた試合に出ると思います。」
――道場はスタッフとか何人で回してるのですか?
「大人クラスの指導は僕と兄でやってますね。キッズクラスは熊田堅信君がやってくれてます。道場はその三人で運営しています。練習もその三人と強い会員さんもいるので強度的にはAOJにいた時とそこまで変わらない練習ができています。またAOJにも落ち着いたら行く予定です。」
階級とコンディション管理
――ワールドプロでは現在のエントリーは-56kgですが、普段の体重は?
「普段は62kgくらいです。ナチュラルライトフェザーですね。」
――以前はフェザー級でも試合をしていましたよね?
「日本ではライトフェザーの選手とはだいたいやったので、戦ったことのない選手とやってみたかったんです。怪我で練習できなかったり、週末に食べすぎたりすると体重が増えちゃうんですけど、普段の練習をしていれば62kgくらいです。」
――では今後の出場階級は?
「国内ではライトフェザーかフェザー、海外の大会ではルースター級で出場するつもりです。」
試合後の一言
「試合は負けてしまいましたが、自分のやるべきことが明確になりました。もっと精進して次のワールドプロ、そしてヨーロピアンに向けてしっかり準備します。」
試合後すぐにもかかわらず快くインタビューに答えてくれた丹羽選手。若くから海外での経験を積み今はアクシス横浜を引率する立場となっての選手活動は想像以上に大変だと思われます。ただイーストジャパンについて聞いたときの少しタメをおいての「出ますか。」の言葉に強い意思を感じた。メルボルンの地で見せた冷静な判断力とテクニカルな展開。丹羽飛龍は静かに、しかし確実に次なる舞台へ歩を進めている。
Interview by Akira Hosokawa / 細川顕(JIU JITSU VOICE)






