
熱戦の一日:海外ジムでの練習から白熱の試合まで
試合当日の朝 ― 準備と環境
試合当日は、会場から車で約20分の距離にあるホテルに滞在していたので移動にはウーバーを利用。周辺にはコンビニやスーパーも揃っている便利な立地だったという。
試合前の練習はオーストラリアの名門「Absolute MMA」で行われた。昨年ミレーナ選手も訪れていた場所でもあり、今年も同じジムでの調整となった。
「ラクランのところだよね」と問われると、「そうです」と即答。実際にオーストラリアを代表する世界的グラップラーのラクラン・ジャイルズとも練習を行ったそうで、その内容については「やられました。形が作れなくて潰されてしまいました」と率直に語った。相手の技術力の高さを感じつつも、貴重な実戦経験を積む時間となったようだ。
第1試合 ― トップからの攻防とギリギリの勝負
大会初戦では8月のJBJJF全日本選手権でも激闘を繰り広げた芝本幸司選手との一戦。ダブルガードからトップポジションを取っての試合運びを選択。これは事前の戦略というより、前回の試合で下のポジションから勝利した経験を踏まえ、「今回は自分からパスしていきたい」という意図があった。タイミングを見計らいながら、積極的に立ってパスを仕掛けたという。
試合展開は終始拮抗。動きが大きく出たのは本当に最後の瞬間だった。芝本選手がIBJJFアジア選手権の決勝でも見せたラペラを使ってのレッスルアップが炸裂し、試合の流れが大きく揺れ動く。
「あれが来るかなと思っていたけど、最後は根性で耐えようと」と振り返る。しかしラペラを巻かれている状態では、スプロールしても切れず、足払いで身体が大きく舞いスイープをされてしまう。残り時間はわずか40秒ほど。
そのとき、セコンドのミレーナ選手がタイムを伝えてくれたことで、冷静に「上を取ることだけ」を考えられたという。「戦略ではなく、とにかく上になればいい」というシンプルな判断で立ち上がり、最後の攻防に挑んだ。
決着の瞬間 ― 根性のスイープと勝利
スイープされながらも50/50から両足をつかみ、流れの中でスタンドバックの形へと移行。バック投げから相手の片膝がついた瞬間にバックを奪取し、見事に2点を獲得した。
「片膝がついたのを確認して、すぐに上を取りに行った。片膝つかせたまま押さえればスイープかテイクダウンでポイントだから。」と、冷静な判断が光る。残り10秒での逆転劇に、観客席からも歓声が上がった。
タイムアップの瞬間は「やったーという気持ちもあったけど、やられた場面も多くて、まだ足りないと感じた」と、勝利の中にも課題を見出していた様子だ。
次なる因縁の対決へ ― 11月再戦の可能性
この一戦で芝本選手との対戦はさらにヒートアップ。「また11月にもやるかもしれない」と11月のイーストジャパンでの再戦の可能性を示唆した。過去の戦績からも、両者の試合は常に緊張感に満ちており、次回の対戦も大きな注目を集めることになりそうだ。
決勝戦 ― 紫帯時代以来の再会
決勝戦の相手は篠田光宏選手。対戦は今回が2回目で、前回は5年前、紫帯のときに戦い、当時は勝利を収めている。「黒帯のルールで戦うのは初めて」と語りつつも、試合前から篠田選手の得意技「ベリンボロ」を警戒していた。
試合開始直後、予想通り相手はダブルガードからベリンボロを仕掛けてきた。お尻を取られ、クラブライドの体勢に持ち込まれるも、「この展開が強いのは分かっていたから驚きはしなかった」と冷静に対応。危険な場面もあったが、バックテイクの防御を続けた。
互角の展開 ― 50/50とフットロックの攻防
その後はお互いにスイープを取り合う展開が続き、お互いに座り合い50/50やベリンボロの応酬が試合の中心となった。フットロックの取り合いも交錯し、緊張感の高い攻防が続く。
一度ニーバーを仕掛けて決めにかかるも、相手はタップせずアドバンテージを獲得し同点に。そこから再び足を取り直し、フットロックを深く入れた状態でタイムアップ。最終的にはこのフットロックのアドバンテージ差で勝利となった。「最後のフットロックは脇の下にしっかり入っていた。足も腰も踏んでいたので、いい感触だった」と振り返った。
試合時間を通して両者とも立ち上がることはほとんどなく、終始寝技中心の展開。「どちらが上を取るかではなく、技の深さで勝負する戦いだった」と総括する。
今後の目標:イーストジャパン優勝を目指して
今回の優勝で所有ポイントは54点。この結果を受けて、次なる大会は11月の「イーストジャパン」での優勝を視野に入れている。
「じゃあ来月のイーストジャパンで優勝したら81か。そうしたらムンジアルに出れます。それが今年の目標です。」
今年の最後の目標として、「イーストジャパンでの優勝」が掲げられた。今回の大会で妻であるミレーナ選手がムンジアル出場ポイントを獲得したこともあり士気は高まっている。
「HOMIESの魁くん、ミレーナ、僕の三人でムンジアル行きましょう」という言葉には、個人だけでなくチームとして成果を積み上げていく意欲が込められていた。
ライバルとのイーストジャパンでの再戦、そして世界選手権出場の「81ポイント」獲得に向けて――選手たちの挑戦は、まだ終わらない。
Interview by Akira Hosokawa / 細川顕(JIU JITSU VOICE)






