【細川顕の JIU JITSU VOICE Vol.12】アブダビワールドプロ 山本博斗選手 試合後インタビュー「ワールドプロ3度目の挑戦に込めた思いと戦い続ける理由」

インタビュー

ワールドプロへの再挑戦 ― 3回目の大舞台へ

今回のインタビューは、ワールドプロへ3度目の挑戦となる山本博斗選手(IGLOO)に、その背景や現在のコンディションについて伺う形で始まった。山本選手が初めてワールドプロに出場したのは2021年で3位入賞している。昨年に続き今年も参戦し、アブダビでの大会の流れや雰囲気には慣れてきたという。

しかし、出場への道は決して順風満帆とは言えない。首や腰の手術により長期間試合間隔が空き、IBJJF海外大会へ向けたポイントの獲得も難しい状況が続いてきた。それでも「自分が今出場できる大会の中で一番大きい舞台だから」とワールドプロへの挑戦を続けてきた。

遠征スケジュールと減量について

今回の遠征は約1週間。試合では前日計量が行われ、最短でも2日間、決勝に進めば3日間の連戦になる。
体重は毎回6kgほど落とす必要があり、「しんどいけど普通の範囲」と語る。前日計量であるため、水抜きの調整で乗り切るやり方が定着しているという。

練習環境と“できない”現実との向き合い方

山本選手は「ハードな練習をしていない選手」という印象を持たれることがある。しかしこれは誤解ではなく、実際に強度の高い練習が難しい身体状況にあるためだ。

首と腰の手術後、体に負担のかかる動きができず、ハードなスパーリングも難しい。トレーニングも自重以上の負荷をかけられない。パーソナルジムで“トレーニング”ではなく、手術部位のメンテナンスと神経治療のためのリハビリをしているという。

「なかなか改善は正直見えていない」と語るように、現在のコンディションは非常に厳しい。それでも大会へ出続けるのは、選手としての思いが消えないからだ。

1回戦 vs 丹羽飛龍

ワールドプロでは組み合わせの変更が直前に行われることが珍しくない。今年も例外ではなく、なんと「試合10分前」にトーナメントが変更されたという。前日の予選を勝ち上がったブラジル勢が当日に組み込まれるため、毎年こうした変更が起こる。

初戦の相手はなんと同じ日本勢の丹羽飛龍選手。5年前、茶帯時代に一度対戦して以来の再戦だった。
試合は山本選手が上からキムラトラップを仕掛けた流れでバックを取られ、最終的に腕十字で一本負け。「自分の焦りとミス」が敗因と悔しさをにじませた。

敗者復活戦 vs Derson Xavier (Commando Group)

敗者復活戦では、大柄で金髪のアンゴラ人選手ダーソン・シャビエルと対戦。本戦の5分では互いにポイントが入らない展開となったが、延長戦のレフリー判定で勝利を収めた。

「負ける感じではなかった。いけると思っていた」と手応えも語る。
試合内容は、延長戦で山本選手が引き込みからクローズガードへ入り、1度スイープを仕掛けたことが評価され、判定の決め手になったようだ。

世界的強豪との戦い vs Yuri Hendrex (Melqui Galvao)

続く相手はブラジル予選を勝ち抜いてきた実力者、ユーリ・ヘンドリックス。ヨーロピアン、ブラジレイロなどIBJJF主要大会での優勝歴がある世界的強豪だ。

最初のダブルガードからの立ち上がりで山本選手が1点を獲得。その後パスを狙うが、相手得意のリバースクローズドガードに捕まり、足関節を警戒して下へ回る形になり2ポイントを失う。

その後は攻め返して上を取り返したがポイントにはつながらず、そのまま試合終了。スコア2-1での敗戦となった。

「リバースクローズドに入られなければ違う展開があった」「もっとやられると思っていた」と、強豪相手に競った戦いが大きな経験になったと振り返る。

大会後の心境と、続く迷い

ワールドプロに毎年調整を続けているものの、理想とする結果はまだついてきていない。
さらに首と腰の術後コンディションは改善が見えず、来年の出場については「少し考えたい」という本音もこぼれた。

しかしながら、柔術人生を諦める気持ちはない。

20歳以降の4〜5年を“手術とリハビリ”に費やし、技術的にもフィジカル的にも停滞を感じ迷いつつも、「やっぱり諦めきれない。自分の才能の到達点を見届けたい」と語る。柔術を始めたのは小学6年生。15年以上続けてきた競技を簡単に手放すことはできない。

身体との対話 ― ガード選択と練習方法の模索

首や腰に負担がかかる動きはほとんど封じられ、逆さ系のガード、強い圧力のかかるパスなどはできなくなった。
結果として、山本選手は自身のフェイバリットであるクローズガードを中心に「自分の体が耐えられる柔術」を追求している。

練習強度を上げられない中で技術を磨くには、動画研究や軽い打ち込みなど、工夫した方法しか残されていない。それでも「自分ができる強くなる道」を模索し続けている。

来年への展望 ― 国内大会からの再構築へ

来年はまず国内大会から再スタートしたい考えだという。今年はASJJF大会での優勝もあったが、本人は「相手がそこまで評価できない」と厳しい自己分析を崩さない。

国内で経験を積み直し、全日本、アジアなどの大きな国内大会で結果を残せれば、再びワールドプロに挑戦したいと語る。

手術箇所の悪化は避けたいものの、「諦めきれない気持ち」が山本選手を前に進ませている。2021年のJBJJF全日本黒帯ルースター級を劇的な内容で制しその名を世にしらしめた天才肌の選手が抱える苦悩。20代前半の多くを辛い時間で埋められた歯痒さを思うと胸が痛い。そんな状況下でも挑戦を続けて世界的強豪のユーリ・ヘンドリックスと接戦を繰り広げられる実力は本物だ。彼が語る「自分ができる強くなる道」を見つけ更なる活躍ができることを願う。

※ヘルニアでの競技復帰経験のある方やよい情報をお持ちの方は是非彼にご連絡して欲しいです。

Interview by Akira Hosokawa / 細川顕(JIU JITSU VOICE)


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