【細川顕の JIU JITSU VOICE Vol.14】IBJJFノーギワールド2025 吉永力選手 試合後インタビュー「世界の舞台で戦うリアルな手応えと課題」

インタビュー

吉永力(トライフォース)選手にノーギワールド2025の準備や現地での過ごし方、そして試合内容について、詳しく振り返ってもらった。

今回のノーギーワールドはアメリカ・ラスベガスで開催。

試合は金曜日に行われ、水曜日に現地入りしたため、到着から試合までは約2日間というスケジュールだった。

ラスベガス自体は今回で3回目か4回目の訪問で、会場も昨年と同じコンベンションセンター。環境面では比較的慣れた状態で臨めた大会だったという。

現地入り後の過ごし方とコンディション調整現地に到着した翌日は、まず試合会場を下見し、実際の試合を少し観戦。

その後は無理をせず、宿に戻って休養を優先する過ごし方だった。

時差ボケも多少あり、昼寝を挟みながら身体を整えていく、シンプルだが重要な調整期間だったと振り返る。

1回戦 vs RELTER LIMA SILVA FILHO(Gracie Barra)

警戒されながらも仕留めた内ヒール迎えた1回戦。初対戦の選手で、所属はグレイシーバッハ系統とみられるが、詳細な支部までは分からなかったという。

試合はKガードから展開し、最終的なフィニッシュは内ヒールフック。実は試合序盤から、相手が足関節を非常に警戒していることを強く感じていたという。

開始1分ほどで形自体には入ったものの、場外際をうまく使われて逃げられる場面も多く、相手は場外逃避も辞さない姿勢だった。それでも焦ることなく、しっかりと取り切って勝利。

研究されていることを実感しながらも、自分の形に持ち込み切れた初戦だった。

準々決勝 vs SHAY ANANDA MONTAGUE(ECJJA) シェイン・モンタギューとの再戦

続くクォーターファイナル、ベスト8で対戦したのは、ヨーロピアンノーギ決勝で対戦した因縁の相手シェイン・モンタギュー。

今回で3度目の対戦となる。

試合展開は序盤、こちらがアドバンテージを先取し、ダブルガードの展開に。その後は一進一退の、いわゆるシーソーゲームが続いた。

一度はポイント勝利も視野に入れたものの、このまま待ちの展開では不利になると判断。

リスクを承知で「極めに行く」選択をした。リバースデラヒーバから攻めに入った瞬間、相手の得意とするムーブが炸裂する。内側への動きに合わせたバックテイク。

最初はリバーストライアングルを狙ってきたように見えたが、そこから巧みにキムラトラップを作られ、最終的にはバックを奪われてしまう。結果はバックテイクからのチョーク。

警戒していれば防げると思っていた場面だっただけに、相手の完成度の高さが際立つ一戦となった。

この大会でシェイン・モンタギューはそのまま優勝。準決勝では2024ワールドチャンピオンのベベトを下し、決勝でも残り30秒を切ったところで三角締めによる一本勝ちを収めている。

決勝の土壇場で決め切る勝負強さについて、「本当に強い」と率直に評価。

一方で、実際に対戦した感覚としては、フィジカルの強さをほとんど感じないという。

それでも勝ち切れるのは、純粋なテクニックの高さゆえだと語る。

シェインはスコットランド人として初のIBJJF黒帯チャンピオンで、黒帯ではヨーロピアンノーギやブラジレイロノーギなど、主要大会で結果を残し続けている。

今シーズンは特に好調で、実力と勢いの両方を兼ね備えた存在だ。

ライバルとの関係性と大会会場での交流会場では、シェインから話しかけられることもあり、試合後にはDMで「試合をしてくれてありがとう」「お互いの成長につながった」といったメッセージをもらったこともあるという。

言葉の壁はありつつも、ライバルとしてのリスペクトは確かに存在している。

そのほか、過去に対戦したエヴァートン・ソウザなどとも、久々に会場で顔を合わせると自然に挨拶を交わす。

世界の舞台で何度も顔を合わせるからこそ生まれる、独特の関係性がそこにはあった。

調整期間とコンディション管理への反省

今大会を振り返る中で、準備段階についての率直な反省も語られた。

正直なところ、ヨーロピアンノーギからの短いスパンだった今回のスケジュールはあまり合っていなかったという。

疲労もあり怪我というほどではないものの、一度練習の間隔が空いたことで追い込みの感覚が抜けてしまった感覚があった。

特に、指導員という立場では、追い込みのタイミングや強度設定が難しい。

もう少し間隔を空け、3か月ほど余裕を持った調整にしておけばよかったのではないかと振り返る。

紫帯時代には3週連続で試合に出ていた経験もあるが、現在のレベルや環境では、より繊細な調整が求められていると感じている。

来年に向けた活動方針と大会選択

今年1年を通してノーギを中心に活動してきたが、来年も引き続き、海外のノーギ大会をメインに戦っていく予定だという。

ノーギはすでにシーズンの流れがある程度固まっており、12月頭のノーギワールドを軸にパンノーギ・ヨーロピアンノーギなどを視野に入れている。

狙うのはあくまで国際大会だが、どうしてもアメリカ中心の活動になりやすい。ただし、ワールド前後の期間はどちらもスパンが短く、スケジュールの組み方は大きな課題だと語る。

「もう一歩で届く」という手応え

来年も対戦相手の顔ぶれは大きく変わらないだろうと予想している中で、「もう一歩で届く」「いけそうな匂いはしている」という確かな手応えもあるという。

実際に、自分でも「取れそうだ」と思えている感覚があり、そこに大きなモチベーションを感じている。国内大会については、ノーギ自体の大会数が少なく、あっても全日本ノーギ程度に限られてしまう。

階級的にもプロマッチの機会は少なく、どうしても海外に目を向けざるを得ない現状がある。

インサイドヒール教則とノーギ指導への考え方

インタビューの終盤では、自身がリリースしているインサイドヒールに特化した教則についても触れられた。

これまで試合という実戦の中で培ってきたヒールフックを体系化した内容で、インサイドヒールを学びたい人やノーギに興味のある人には、ぜひ手に取ってほしいという。

普段のノーギ練習では基本的にヒールありで行っており、池袋の道場でもヒールありで練習している会員が多い。

指導者としては怪我のリスクが気になる部分ではあるが、実際にヒールで大怪我をした会員は見たことがなく、技術理解とルールの徹底が重要だと考えている。

ヒール解禁とルールの変化への展望道衣柔術(ギ)ではヒールが使えない現状がある中で、将来的にはマスターカテゴリーの茶帯・黒帯でも、ノーギではヒールが解禁される可能性があるのではないかという見方も示された。

IBJJFが内絞り系フットロックを許可した流れを考えると、まったくあり得ない未来ではない。

現在のルールで戦っている選手たちがマスター世代になったとき、競技の在り方が変わっている可能性は十分にある。

競技人口やカテゴリーごとの参加数の変化も含め、今後の脚関節ルール改定には注目しているという。

ノーギワールドの規模と日本人選手の現状今回のノーギワールドは、参加人数・大会規模ともに非常に大きく、発表では約4,000人が出場していたとされる。

マスターカテゴリーの参加者も多く、会場は終始盛り上がっていた。

一方で、日本人選手の参加は依然として少数派だ。

ノーギワールドを目指す選手自体は存在するものの、全体としてはまだ少なく、ノーギそのものが日本で大きく流行っているとは言い難い現状がある。

それでも、ポイント制で出場権が得られるという仕組みもあり、挑戦する価値は十分にあると語る。

ノーギと道衣、二極化する競技性の中でノーギと道衣は競技として大きく性質が変わってきており、黒帯で世界を狙うには、どちらかに特化しないと厳しい時代になりつつある。

特にヒールの有無はゲーム性を大きく変え、戦い方そのものが別競技と言えるほどの差を生んでいる。

吉永はヒール解禁前にもノーギを経験していたが、本格的に取り組み始めたのはヒール解禁後。

その面白さに惹かれ、海外選手の教則や映像を徹底的に研究しながら学んできたという。

日本人選手とともに戦う国際舞台今大会では西林選手率いるPATO STUDIO勢の日本人選手の参加もあり、前回のヨーロッパ大会と比べると心強さはあったという。

それでも、まだまだ少数であることに変わりはなく、世界の舞台で戦う日本人ノーギ選手が増えてほしいという思いもにじんでいた。

吉永力「インサイドヒールフック」 | トライフォース柔術オンライントレーニング Tri-force BJJ online training

ノーギ世界王者を目指して

来年もノーギを軸に活動を続け、世界のトップと戦い続ける。

その先にある「ノーギワールド制覇」を目標に、また一歩ずつ積み上げていく。

世界の舞台で戦うリアルな手応えと課題、そのすべてが詰まったノーギワールド2025の挑戦だった。

Interview by Akira Hosokawa / 細川顕(JIU JITSU VOICE)

タイトルとURLをコピーしました